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正面から向かい合った美鷹那月の印象。
顔良し、スタイル良し、品性良し。
加えてどこかあどけない笑みと人懐っこい態度が、総ポイントを上げてくる。
ほうほう、看護師の子らが言ってた通りだ。
確かに通勤路にこんなお巡りさんがパトロールしていたら、色々と捗るだろう。
しかし以前に見かけたときから思っていたのだが、正直兄弟ですと言われても疑ってしまう程似ていない。
美鷹那月は、美鷹香月とはまた違うジャンルの美形さんだった。
……さて、趣味の合致で雑談に花が開いているところ美鷹那月には申し訳ないのだが。
俺たちの和やかな雰囲気を快く思っていない方がいらっしゃるようなので、本題に移らせて頂こうか。
と、俺は話の先手を切った。
「院長の弟さんであるあなたとはこの結び付けゆえ、これからも深く長いお付き合いをしていきたいと思っていますので。共通の趣味嗜好があるのは大変喜ばしいことです」
”美鷹香月の恋人として、弟である君と深く長い関係を築きたい”
「ねっ? 院長?」
そんなことを仄めかす言葉を仕掛けたのち、俺は相槌を促すようなフリで美鷹香月の様子を窺う。
美鷹香月は何も答えず、ただじっと青ざめた表情で視線を落としていた。
「兄とは、いつ頃から付き合い始めたのですか?」
そんな美鷹香月が口を開くのを待たずに、美鷹那月は興味津々といった様子で訊ねてきた。
美鷹香月の色恋沙汰は弟の彼にとってはかなり珍しく、刺激的なものだというのが見て取れた。
”兄のどこに惹かれたのか”
無邪気に俺に問う彼の態度は、非常に好意的なものだった。
――……彼は。
(……弟さんは、気付いていないのだろうか)
兄弟の温度の差を、美鷹香月のこの追い詰められているような様子を。
「苦境に陥っても理不尽を強いられても、弱さや辛さをおくびにも出さずに毅然と振る舞い続ける姿勢に、胸を打たれたんですよ。
なんて気丈な人なんだろうと感心すると同時に、傍で支えたいと強く思ったのです」
ほら、ちょうど今のように。
あなたを守るために、彼はここにいるのです。
苦しいのに、青白い表情で必死で平然を装って、唇を噛んでいるのです。
……美鷹那月、あなたには。
俺に怯えている彼の姿が見えないのか?
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