第3章:弟からの最後のおねがい

4/5
前へ
/19ページ
次へ
「どうし……て?」 「俺はおまえをそういう相手には見れない。血のつながりがなくても弟だ」 「じゃあ、誰なら見れるっていうの? 今までそんな人いなかった」 「それは俺にもわからない。俺は今まで、人を真剣に好きになったことなんてない。だから、来るものを拒まなかっただけで」 「何それ」 「最低だろ。でも俺にはそういう風にしか気持ち受け止めてやれないから」  あの肉体関係は、兄が自分に好意を持ってくれている相手に対して、してあげられる精一杯だったのだ。特定を作らずにとっかえひっかえ、相手が変わっていたのも、すべての相手に対して平等に与えた誠意。  人として褒められる行動ではないが、兄が考えた最善の返事だったというのか。 「じゃあ、俺のことも抱けるよね」 「は? 何言って……」 「俺の気持ちも受け止めてよ」 「バカ。俺とおまえは兄弟……」 「関係ないよ! なんでほかの人は抱けて、俺はダメなの?」  理不尽なことを言っている自覚はあった。言いがかりなのも認める。それでも自分は泣きながら、兄に訴えていた。なんであの女たちはよくて、自分は抱いてもらえないのか。     
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

331人が本棚に入れています
本棚に追加