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「ああっ……出ちゃう」
「いいよ、イケよ」
「兄ちゃんっ……!」
兄を呼びながら、白濁を吐き出した。どの快感でイッたか、わからなかった。白い液を滴らせながら、後ろの穴も感じていた。兄の腰の動きが早くなって、もうすぐ絶頂を迎えるのだろうと思う。
「うっ……」
兄は直前に引き抜いて、要の背中に温かいものを放出させた。中にそのまま注いでくれてもよかったのに、女とするときはいつもそうしているのだろうか。せっかく兄が抱いてくれたというのに、その終わり方まで比べてしまう自分が恨めしい。
自分もそのまま仰向けになり、兄も隣で仰向けになった。甘いピロートークを交わすような余裕は二人になかった。
「男でもイケるんだな……俺」
「そうみたいだね」
「あー、知りたくなかった。男だけは告られても受けなかったのに」
当然男からもモテていたんだと思う。自分が兄の初めての男になれた。それがささやかな優越感だった。
「本当に、よかったのか?」
「何が?」
「最初で最後だからな」
「わかってる。ありがとう」
兄に擦り寄れば、細いのにたくましいその腕が自分を引き寄せてくれた。『こんなことしてやったことないからな』と笑っていた。
ずっと好きだった兄に抱かれたあと、一番最初に思ったことは『セックスとは、こんなもんか』だった。きっと、そう思い込もうとしたせいだろう。
たいしたことないと思わなければ、この焦げ付いた恋心は消えそうにない。
兄よりも上の人間になって、兄の存在なんてちっぽけなものにしてしまおう。そうじゃなければ、一生、兄への想いを持ったままになってしまう。
兄の大事だったものはすべて奪う。そして兄のすべてを超えよう。
自分の中に闘志のような小さな火が燃え盛っていくのを感じながら、要は、そっと目を閉じた。
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