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プロローグ
最初は誰の声を聞こえていないように、目を気にしないようにした。
(罵倒する声を聞きたくなかったから、冷たい視線を見たくなかったから)
声を出すのを辞めた。
(誰も自分の声を求めていなかったから。)
表情を出すのを辞めた。
(誰とも共有できないなら必要ないから。)
最後に、もう何も感じないようにした。
(何も感じなければ、楽になれたから。)
なにを言われてもどう見られても何も感じていないふりをした。
1人で平気なんだって言う顔を張り付けていたらそれがいつのまにかとれなくなってしまった。
自分の思う寂しいも悲しいも、2人からの憎みや苦しみの眼も、何もかもを感じなければ、感じないようにしないと、きっと俺は壊れてしまっただろうから。
感情を出さないことで、彼らへの贖罪だとも考えた。きっと悲しいとも楽しいとも感じずに生きることで少しでも、謝罪しようと思った。
それが誰にもなれない『俺』の唯一出来る声が届かない返事も聞こえない彼らへの謝罪。
きっとこれからも俺は何も思い出せない両親に謝りながら、思い出す日を待ちながら(かと言って積極的に思い出そうとせずに)日々を過ごしていくんだろうと、そう思っていた。
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