内鵜仁(一)

2/4
前へ
/229ページ
次へ
 くそっ、卑怯な奴だ。そうまでしてこのオレに勝ちたいか?  全国模試でも常に一桁の成績で陸上部のエース。勉強、スポーツ、何をしてもあっさり一番を取ってしまうオレにどうしても勝ちたくてついカンニング。情けない。  節穴だらけの先生どもは騙せても、オレがそのインチキを暴いてやる。  そういや、一位取った奴って何て名前だっけか?  そうだ、廊下に張り出してあった上位者リストに書いてあったよな?  帰るときに確認しとくか。  ああ、それにしても夕陽がまぶしい。夕陽はなぜ赤いのか?  こんなこと、いま地上でバカみたいに球追っかけ回しているだけの連中にはわかるまい。  地球の自転により、太陽は西の空に沈んでいく。そのため夕方は昼間に比べ、太陽光が我々のいる場所に降り注ぐ角度が浅くなる。すると昼間に比べて太陽光が大気層を通過する距離が伸びる。逆に昼間に権勢を誇っていた短波長の青色光は障害物に衝突する頻度が増し…… 「きっれいな夕陽やのう、ああ、ホンマ地球の夕陽はローレルより美しいのう」  誰だ?  さっきまで誰もいなかったはずだ。それは屋上に来るときに確認している。     
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加