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「宇宙飛行士になれるのはまだ地球じゃ、ごく限られた一部の人だけだからな。オレがそのごく一部の人になれるよう頑張るよ。ま、オレなら確実になれるけどな」
おっさんとオレの会話を横で聞いていた皆野さんが
「ふっ」
と笑いながら口を挟んできた。
「最後まで強気の姿勢は変わらなかったな。いいことだ。どうだ、エンジニアしながら宇宙飛行士を目指してみるというのは?」
皆野さんは嬉しそうに笑っている。オレも微笑み
「考えときます」
とひとこと返した。
「ほな行くわ。ありがとな」
「あ、あ、ありがとうご、ご、ございました」
「一週間したら私は戻ってきますから、またお会いしましょう」
「美麗ちゃん、元気でねえ。ぶわあ」
美麗と泣きじゃくる人魚が抱き合い、オレと皆野さんはおっさん、ユニ、園路さんと順番に握手を交わした。
旅立つ四人はやがて三台の宇宙船に乗り込み、園路さん、おっさん、ユニの順番に飛び立っていった。
校舎の屋上に残された者たちは、その姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
泣いてなんかいない。ただ目が少しかゆかっただけだ。
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