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豆井戸美麗(一)
誰もいない海。波の音だけが静かに繰り返される。湘南の海とはいえ、この辺は駐車場もないので、観光客が押し寄せることもほとんどない。ましてやこんな平日の夕暮れどきに好きこのんでここに来る人なんているわけないもんね。
だから美麗はここが好き。ひとりになりたい気分のときは必ずここに来て海を眺めるの。
容姿端麗でお料理だってそこそこ得意。成績だって頭良すぎず、バカ過ぎずの程々。それよりも何よりも超性格美人。
もしミス片瀬海岸高校が開かれるなら、グランプリ間違いなしの豆井戸美麗ちゃん。なのになんで誰も美麗に振り向いてくれないのかしらね?
美麗があまりにもきれいすぎて高嶺の花、みんな緊張しちゃうのかなあ?
美麗の王子様はどこにいるのかしら?
あそこに見える船からカッコいい海の男が現れて、溺れかけた美麗を救ってくれる。そしてそのまま美麗と彼は恋に落ちる。ああ、なんてロマンティックなの。
そっか、それじゃあ、まずは溺れてみればいいのかしら? そうすれば屈強な海の男が助けに来てくれるわよね?
よし、そうと決まったら、まずは溺れてみるか。
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