20人が本棚に入れています
本棚に追加
内鵜仁(一)
昔々、あるところに浦島太郎という青年がおったそうじゃ。
太郎は乙姫と死ぬまで仲よく暮らしたそうな。
----------------------------------------------------
錆びついた重いドアが不快な音を立てる。そのドアを通り抜けると、目の前には誰もいないコンクリートジャングルが広がっていた。
ここは夕暮れどきの校舎屋上。オレは手すりに身体をもたせかけ、ひとり黄昏れている。
ここは避雷針や水道のタンクがあるだけ。なんとも殺風景だ。こんなところに好きこのんで来る者など、オレの他には誰もいない。
だからオレはこの場所が好きだ。ひとりになりたい気分のときは、必ずここに来る。
いまはまさに、その『ひとりになりたい気分』の真っただ中だった。
『片瀬海岸高校 二年生中間テスト成績 二位 内鵜仁』
最初は何かの間違いじゃないかと目を疑った。
自慢じゃないが、オレはこの県内でも有数の進学校に入って一年半、『試験』と名のつくもので一番以外を取ったことがない。今回の試験も決して悪い感触ではなかった。
だのに、なぜだ?
一位のやつは何か不正を行ったに違いない。
最初のコメントを投稿しよう!