一皿目・魔法の卵サンド

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「こんにちは……」 紹介された私は、軽くバーカウンターの向こうの男性に会釈した。 彼はにこやかに私にお辞儀をすると、藁島に尋ねる。 「里帰りということは尾道出身の方ですか?」 「そうそう、坂道椎奈ちゃん。ほら【ネコのとおりみち】の娘さん! つーか、あそこのオーナーの妹さん」 ねこのとおりみちとは、兄のやっているゲストハウス兼定食屋の名前だ。 自宅を改装したゲストハウスと、出て行った父が昔やっていた定食屋を繋げているのだが、なかなか評判はいいらしい。 久しぶりに帰郷した時は、家に大勢の外国人が宿泊していることに驚かされたものだ。 「……ああ、坂道さん家の子か」 【坂道さん家の子】で伝わるということは、地元の事をそれなりに把握しているということだ。 彼が喫茶店で働きだしたのは私の上京後だろうが、この辺りのことは私よりも詳しいに違いない。
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