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窓際の席に座ると、すぐにメニューを差し出された。
「こちら、メニューになります。とは言っても、今の時間はランチとドリンクとちょっとしたデザートしかありませんけど」
メニューを開くと、三種類のランチが可愛らしいイラスト付きで載っていた。
西ばぁが生きていた時は、確かシンプルな手書きの文字だけだったはずだ。
それにしても、オムライスにオムレツに卵サンド――昔から、こんなに種類が少なかっただろうか。
しかも、すべて卵料理だ。
不思議に思ったが、選ぶメニューはすでに決めてある。
「すみません、注文いいですか?」
手をあげて呼ぶと、獅々田さんではなく藁島が注文を取りに来た。
注文はまだだが、私の前にコーヒーカップが置かれる。
出されたカフェラテには可愛らしい黒猫が描いてあった。
モデルは先ほど猫だろうか。
「獅々田さんからのサービスね」
そういえば、彼はラテアートの練習をしていると言っていた。
「んで、何にする?」
「卵サンドをお願いします」
メニューを指さすと、彼はふざけた風に敬礼をした。
「りょーかいです! ――注文、卵サンドだって!」
厨房に向かって、藁島が恥ずかしいほど大きな声を出す。
喫茶店のレトロで落ち着いた雰囲気をぶち壊す声に、不安に駆られた。
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