二皿目・勇気のスフレオムライス

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獅々田さんにお礼を言いながら、カウンターに座っている鉄平君に目をやる。 肘をついて居眠りをする彼を見ていると、なかなか話しかけられないことに耐えきれなくなったのか、藁島が一人で話し出した。 「――ばあちゃんが亡くなってから、葬式でこの店はどうするんだーって話になった時さ。俺は昔から店を継ぐ気だったし? 息巻いてオズの二代目になるって宣言したわけ。んで、継いだのはよかったんだけど、喫茶店の目玉だった卵サンドは誰も作れないし、獅々田さんは料理が破滅的に下手だし」 「僕はバリスタなので」   自分の顔を指さし、獅々田さんは照れ臭そうに笑った。 「獅々田さん、ラテアートは得意なんだよ。その器用さが料理に生かせないのが謎だけどね。俺はパティシエだから料理は作らない主義だし、料理人が必要ってわけでこいつに頼んだわけよ」   藁島は窓際から離れ、私の前に座った。 ため息を吐き、遠い目をしながら窓の外に目を向ける。 「知ってるかもしれないけど、鉄平はフランスで料理人やっててさ。あっちでこいつの料理を食べたことがあったから、腕は確か。まあ、今は訳ありで料理はしないけど、いないよりはましかなぁって」   料理をしない料理人などただの穀つぶしだと思うのは、私だけだろうか。 足を組んでどこか格好をつけた藁島に、なんとなく腹が立ってくる。 取りあえず、顎の下にあてた手は退けてほしい。
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