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「そんなこんなで、俺が二代目になって初めの頃はまだよかったんだよ。ばあちゃんが亡くなるまでは、隠れた名店ってことでネットでは結構有名店でさ。口コミを見た人とか、常連さんとかそこそこ来てくれててさ。でも、ネットの弊害ってやつだよね。俺の代になってから料理が劇的にマズくなったことが、いわゆるネットで拡散されて? あっという間に、評判が下がったってわけよ」
語り続ける藁島の向かいで、私は獅々田さんが淹れてくれたコーヒーを飲む。
「まあ、俺も含めて従業員はイケメンだし、コーヒーとデザートは旨いし? 何とかやっていけるかなと思ったよね。でも、世の中そんなに甘くなかったわけよ! そうだ、ちょっと待ってて。見て欲しいものがあるから」
立ち上がった藁島は、カウンターの奥に入ると何かを持ってきた。
テーブルに置かれたのは、両手サイズの電子タブレットだ。
薄型のそれを起動させると、慣れた手つきでパスワードを入力していく。
「――ここ、携帯電話もスマホも禁止じゃなかった?」
「これ、電子タブレットだから。それに、俺はマスターだからいいの、いいの」
藁島はタブレットを操作していく。
覗き込むと、どうやら飲食店専門の口コミサイトを検索しているようだ。
このサイトは、場所やキーワードを入力すると探したい店を見つけてくれる。
私も何度か利用したことがあるが、世間でも有名なサイトだ。
藁島は喫茶オズのページを開いた。
意外と口コミは多く、百件以上もある。
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