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自然と戸口へ目を向けると、セーラー服と紺色のプリーツスカートが見えた。
あれはこのあたりの高校の制服だ。
「――すみません、注文いいですか?」
おずおずと顔を出したのは、ポニーテールの利発そうな女子高生だった。
大きく丸い瞳、太めの下がり眉、ふっくらとした頬。
リスやウサギを思わせる、小動物のような少女だ。
なにかスポーツをしているのかもしれない。
スカートからのぞく足には、しっかりと筋肉がついていて意外と逞しそうだ。
チーターのような足をまじまじと見ていたが、これではまるで不審者だ。
慌てて視線をそらす。
「はいはい、一名様でいいかな? 好きな席に座ってちょうだい」
藁島が手を伸ばして店内に案内しようとするが、少女は土間に降りたまま言った。
「あの、魔法のランチってまだやってますか?」
少女の言葉に私は思わず立ち上がりそうになる。
魔法のランチとは、お客さんの食べたいものをなんでも作るこの喫茶店の名物の一つだ。
お客さんの頭の中にあるレシピを引き出し、あらゆる料理を調理する。
その人が必要としている料理を生前、西ばあはいくつも調理していた。
ランチのレシピの大半は、注文したお客様の思い出の中にしか存在しない。
そんなレシピを喫茶オズの先代である西ばあは、いつも完璧に再現していた。
彼女はお客さんの記憶を頼りにさまざまな料理を作ってきた。
さながら魔法のような料理たちに、西ばあはオズの魔法使いと呼ばれるようになったのだ。
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