二皿目・勇気のスフレオムライス

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「――待って!」 私の呼び止めた声に、戸口に手をかけていた愛花ちゃんが振り向いた。 真ん丸な瞳が私を見つめる。 「料理を作れる人間なら、ここにいる! 私でよければ、作るよ。スフレオムライス」 私は気づくと思わず口走っていた。 「本当ですか!」 言ってしまった。 華やかで瑞々しい笑顔を満開にした愛花ちゃんに、冷や汗が流れる。 口にしたことは今更取り消せない。 それに、この笑顔を見ておきながら後に引けるわけがない。 覚悟を決めた私ははっきりと頷いて見せた。 「明日のお昼に魔法のランチを作るから、楽しみに待っててね」 「あ、ありがとうございます!」 愛花ちゃんが深々と頭を下げる。 「楽しみにしています!」と言い残し、顔を上気させた彼女は喫茶店を後にした。 (覚悟を決めるしかないか) 今度は私が頭を下げる番だ。 「藁島太陽さん、お願いがあります。明日までの間、ここで働かせてください!」 従業員でもないくせに、勝手なことを言っているのは分かっている。 普段の私からは考えられないくらい、常識はずれな行動だ。 分かっていても、彼女を見過ごすことができなかった。 母にお別れを言えなかった自分と重ねているだけではない。 あの瞳に満ちた勇気をこの手で外に出してあげたくなった。 それに、彼女には私の大好きなこの喫茶店を好きでいてほしい。 身勝手な理由だと思われるのも覚悟のうえで、私は藁島に頼み込んだ。
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