二皿目・勇気のスフレオムライス

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「うーん、そうだなぁ……。おっけぃ!」 「えっ、いいの!」 藁島は親指を立て、私に向かって突き出した。 予想以上にあっさり許可が出たことに驚き、思わず聞き返す。 「何を隠そう、実はガキの頃、ドロシーちゃんのことが好きだったんだよね」 「う、うそ?」 「うん、ウソ!」 引っかかった? と、笑う藁島に子供時代の彼の顔が重なる。 身もだえるほど苛立つこのノリは、相変わらずのようだ。 藁島太陽、大人になってもやはり苦手だ。 「冗談はこれくらいにして。ドロシーちゃんって東京のレストランで働いてたんだろ? そこが潰れて今は失業中なんだって? 大変だねぇ」 藁島は急にまじめな――悪だくみを思いついたような顔に変わる。 「どうして、それを?」 「東京に行ってた間に、田舎の情報網を忘れた? 何でも筒抜けだよ……ってのは半分ほんとだけど、実際は正信さんに聞いたんだよ。うち、正信さんとこの定食屋に夕食のデザート用のプリンを卸してるから」 妹の個人情報を流すなんて、しかも天敵に。 お兄ぃめ、帰ったら乃花さんに言いつけてやる。 「失業中のドロシーちゃんを臨時の料理人に任命する。鉄平も文句ないだろ?」 「俺は別にどうでもいい。お前の店なんだから、お前が決めればいいだろ」 他人事のような銀山鉄平の冷たい声が私の胸に突き刺さる。 出過ぎた真似をしてしまっただろうかと落ち込みかけたが、大好きな喫茶オズのことを思い出して私は顔を上げた。
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