二皿目・勇気のスフレオムライス

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「でも、たぶん今のオズの料理を食べても勇気は出ないと思うよ。残念だけど、スフレオムライスなんてシャレた食べ物を作れるやつなんて、ここにはいないからさ。まあ、料理長様が包丁を握るってなら、話は別だけど」 彼女の話を聞いていた藁島が自虐的に言いながら、鉄平君に視線を向ける。 私も愛花ちゃんも懇願するような目で、カウンターで肘をついた鉄平君を見つめた。 「無理だな」 そっけない声に愛花ちゃんが肩を落とす。 予想は出来たものの、よくもけなげな少女に冷たいことが言えたものだ。 本当に、彼はあの銀山鉄平なのだろうか。 自分の料理を食べた人が笑顔になってくれるようなシェフになりたい。 そう言っていた可愛い小学生の鉄平君はどこだ。 「だってさ。というわけで、申しわけないけど諦めてくれる? お詫びにこのおじさんがカフェラテ淹れてくれるから。今なら、好きな絵を描いてくれるよ。何がいい? うさちゃん? それともネコさん?」 ふざけているのか真面目なのか分からないフォローをしながら、藁島は愛花ちゃんの肩に触れようとした。 彼女はその手をスッとよけると、泣きそうな顔で首を振る。 「作れないなら、いいです。お邪魔してすみませんでした」 俯きがちに早口で告げ、彼女は喫茶店を出て行こうとする。 その背中に、私は思わず手を伸ばした。
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