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封筒とパンドラ
翌日、俺は孝介が持ち込んだ中学生の頃のアルバムを見ていた。
別に昔に戻りたいと思っていた訳では無く、ただ良いことも嫌なことも月日が経てば笑い話になるだなんてそんな綺麗事は有り得ないと、頑なに思っていたあの頃さえも今は懐かしく思っていただけだ。しかしそれはただ単に時間の流れの作用か、自らの成長によるものか。答えは暫く出ないかもしれない。
そう思い眼前を見渡す。人は、目の前の現実を叩きつけられた時により重圧も感じるものだ。
「おい、孝介」
孝介もアルバムを見て思い出に浸っていたのか、声を掛けてから1テンポ遅れて顔を上げる。
「何?」
その顔は不満を表していた。自分の世界から呼び戻されたのが癪に触ったのだろう。
「本当にこれだけなのか?」
無駄な問いだとわかっていても聞いてしまう。
「そうだね」
目の前の旧友はそう答えた。
今二人の前に置かれているのはアルバムと道具一式、それに雑用品が入った段ボール箱二つと棚を開けるための鍵のみ。
掃除をする手間が省けたのは良いが、如何せん備品が少な過ぎる。
「........部活なんて出来たものじゃ無いな。色々と買い足せれば良いのだが」
しかし思い描いていた理想はあっさり崩される。
「予算的に厳しいんじゃないんかなあ」
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