封筒とパンドラ

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問題は予算にある。 佐高の財政は苦境に立たされている。県が財政赤字に苦しむここ数年、学校への助成金減少により生徒会会計は殊更出費を渋っている。 始業式直後に行われた会計報告では一部で響めきが起きるほど部費はカットされ、大多数の部活は火の車に陥ったそうだ。 「今年の天文部に降りてくる部費って...,」 「二万円ぐらい」 .....圧倒的に不足だ。いくら部員が少ないとはいえ、余りに少ない。 「それで望遠鏡とか買えるのか?」 「少なくとも本格的な機材は無理」 事前に調べていたのか、キッパリと孝介は答える。 「そうすると活動はできないか」 「そうなるね」 困ったものだ。やる気が無くてもやっている振りぐらいはしなければいけないのに、それすら出来無いのだ。些か心配になる。 「........孝介、お前家で望遠鏡持ってたりしないか?」 「無いと思うなぁ。倫太郎は?」 「残念だけど無い」 そもそも入学する前から部活をする気なんて無かったのだ。用意などしているわけがない。 「部活なのに部活やってる気分じゃあ無いね」 もう仕方がないことだ。こうなった以上は好きな時に駄弁るなり、勉強するなりが可能な場所を手に入れただけでも収穫だと考えるようにしよう。 正直部活道ばかりに感かまけてはいるわけにもいかないので、そう思えば部の活動があまりできないのも丁度いいと思える筈だ。 まだ諦めずに段ボールを漁っていた孝介を脇目に、俺は荷物を?き集める。アルバムは暇潰しになるが、かさばって持ち歩きに不便そうだ。持ってきた孝介は帰りで苦労するに違いない。
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