9人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
青い鳥(1話)
幸せを呼ぶ青い鳥は、今日も空を飛ぶ。
風の流れに従って、小さな町を見下ろした。
子供達の喧騒が飛びかう町、
家の一軒一軒の灯りが心地いい町。
この町の幸福は全て、青い鳥の僕が切り盛りしていた。
僕という存在がいなければ、この町は不幸に包まれるだろう。
青い鳥は、赤い屋根の家に止まると再び思考を巡らせた。
僕は‐人間達が幸せに暮らしていける‐という保証がないと、死ぬに死ねない。
泣いたり笑ったり、とにかく忙しい人間達はまるで、我が子のようだった。
だから守ってやりたいと思ったのだ。
けして、青い鳥としての本能などではない。
僕自身の本能だ。
青い鳥は夕日が昇る空めがけて、飛び立った。
誇らしげな鳴き声が町に響き渡る。
「ピー ピー ピー」
今日も、僕は人間達を幸せにした。
そう信じて疑わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!