社員旅行で、豹変。何があったの?

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ライトアップされた大阪城を見下ろせる、絶好のロケーション。 眼下に広がる、大阪市内の夜景。 周囲には、何の法則だか、等間隔に、カップルの姿が見える。 否応なしに、胸が高鳴る。 ああ、でも、みのりちゃんには恋人がいるって・・・・・・・ それを思い出すと、胸が、ぎゅうっとねじれるように痛む。 私よりも好きなのね。 私よりも美人なの? 何気なく、そう尋ねたいのに、言葉にならない切なさ。 みのりちゃんが、「座りましょう」と、あいているベンチへと促した。 並んで座ると、ますます、緊張感が高まる。 ごくんと生唾を飲み込み、 「綺麗な夜景ね」 と、ありきたりの台詞を口にしてみる。 「涼子さんは、色々な人と、こんな所には来てるでしょうから、つまらないと思ったんでしょ?」 「そ・・・そんな事ないわ」 私は、あわてて否定をする。 否定して、あ、やっぱり「そうね」くらい言った方が、大人の貫禄があったかしらと、少し後悔した。 これが、他の男性だったら、きっとそんな風に「いい女」ぶった台詞も口に出来るのに。 まるで、告白を前に、ぎりぎりまで追い詰められたかのような緊張感を漂わせた10代の子みたいだ。 「涼子さんに、お願いがあるんです。」 「何?」 みのりちゃんは、おもむろに、腕時計を見ながら 「30秒でいいから、手をかしてもらって、目を閉じて貰って良いですか?」 何の申し出??? 「だから、何なの?」 「お願いです。一生のお願いなんです。」 「おおげさね」 内心は、妄想にドキドキしながらも、私は、あえて無造作に手を差し出した。 緊張感を悟られたくなくて・・ 「目、閉じて下さい」 目を閉じないと、私の妄想に気づかれそうな気がして、あえて無防備なフリをするために私は目を閉じた。
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