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私の手を撫でる、みのりちゃんの手・・・
みのりちゃんの手が触れていると思うだけでドキドキするのに、その指が、私の指をなでさする感触に思わず手を引こうとすると、ぎゅっと強く握られる。
「目、絶対に、開けないで下さいね!」
強い口調の声に、私は、気圧されるように目を開けることが出来なくなっていた。
みのりちゃんの指の感触が、エロテックに思えて、そんな事を考えてしまう自分恥ずかしい・・・
それも、みのりちゃんの計算?
「・・はい、30秒です、いいですよ」
みのりちゃんの声に、目を開ける。
こんな、幼稚な陽動作戦で、ときめいている事を悟られたくない。
絶対に。
私は、離された手を、どこに置くべきか考えながら、努めて冷静に、
「いったい、何の儀式?」
「涼子さんの手に、少しでも触れたいだけなんです。もう一度良いですか?今度は、1分だけ」
無理。
ドキドキさせられて・・・
そのドキドキを隠している顔を、見られるなんて事、無理、
恥ずかしくて、
恥ずかしくて・・・
耐えきれず、私は言ってしまった。
「どうして、こんな事をするの?知ってるのよ、恋人がいるんでしょ?」
みのりちゃんは、びくっとして、私の手から自分の手を離した。
「知ってたんですね」
「知ってるわよ。どういうつもり?」
「・・・諦めきれないからです。涼子さんの事」
え?
みのりちゃんは、深いため息をつくと、崖の側まで歩いて行った。
私に背を向けて立つみのりちゃんの向こうに、市内の夜景が広がる。
私の事が好き?
でも、他に恋人がいるんでしょう?
みのりちゃんの悪口を言う、社内の人々の顔が、入れ替わり立ち替わり脳裏を過ぎる。
ひどすぎるよ、みのりちゃん!
頭で、ありったけの「抱きつかない理由」を考えながら、その美しすぎる、すらりとしたシルエットに、私は、思いっきり抱きついていた。
馬鹿な涼子・・・・・・・・・・・・・・
そう、私は、ただの「メンクイ」。
性格の悪い女。
だから、性格の悪い人を好きになる。
みのりちゃんが、振り返りながら、私を抱きしめる。
みのりちゃんの肩越しに、ライトアップされた、お城がみえた。
私は全身で、みのりちゃんを抱きしめる喜びに浸っていた。
もう、後先は考えない・・・・・・・・・
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