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日曜日に、みのりちゃんが誘ってくれたのは、飛行場だった。
正しくは、飛行場の外壁。
飛行機の着陸(タッチダウン)が、間近でみられるらしい。
「行った事ありますか?」
電話で、そう尋ねられたときに、
「夜に見に行ったことはあるわよ。」
と、意味を含ませて答えた。
「じゃ、昼間はまだですね」
私は、なぜだか、言い負かされた気分に陥る。
「昼間は、すごい迫力なんです。涼子さんに、見せたいんです」
そう誘われて・・・・・・・・
車から降りて、コートを羽織るかどうか、少し迷っていると、
「コートいりませんよ。お天気良いですから」
と、みのりちゃんは、車をロックした。
お天気は良いけれど、少し肌寒い・・・・・
頭上を、轟音を立てて、飛行機が降りていくのを、思わず見上げる。
柵の近くには、ばらばらと人が集まっていた。
飛行機のシルエットが見えてくると、大きな無線機を持った男性数人が、管制塔からの電波を受信し
「松山発、●●●便、着陸します」
と、少し大きな声で、周囲に教えてくれる。
みのりちゃんが好きそうな、「オタク」な場だ。
とは言え、普通の、カップルもちらほらいる。
ただ、みんな服装はカジュアルで、デートと言うので、ヒールにワンピース姿の私は、少々浮いていた。
腹の底から響くような轟音と、ジェット機の大きなシルエットは、確かに迫力満点だった。
嫌いじゃ無い・・・・・・・・
ジャンボ機だと、少し、周囲が色めき立つのがわかる。
大きさが、はっきりと違うのがわかる。
「迫力ね」
「でしょ?涼子さん、寒くないですか?」
「少し・・・・・・・寒いわね」
そう答えると、みのりちゃんが自分が着ているコートの前を開けて、私をくるむようにした。
「みのりちゃん・・・・・・・・ちょっと・・・・」
白昼堂々と、体を寄せ合う事に、恥ずかしさを覚えて、そう小声で言うと
「涼子さん、やっぱり、スタイルいい・・・ほら、また飛行機来ますよ」
耳元でささやかれ、くすぐったさに体をよじる。
周囲に視線を走らせたけれど、みんな上空を見上げていて、私たちを見ている人は居ないようだった。
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