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「八王子くん、私の記憶が確かなら、あの日の八王子くんと今の八王子くんには随分と差があるように思うのだけど、それは私の気のせいなのかな?」
私達は手を繋ぎながら公園のベンチに座っていた。私が寄り道をしたいと言ったから。それと手を繋ぎたいとも。もう私は言いたいことは全部言うと決めたのだ。
「ああ、高校デビューだからね。僕も色々したから。体重落としたり筋肉つけたり色々。次に高崎と会う時はもっと自分に自信を持てるようになりたかったから」
なんということでしょう、時期は違えど私達はまるっきり同じ行動をとっていたのです。それなのにこの努力を少しも鼻にかけないところが私と違うところなのだ。
「高崎。目、つぶって」
じわじわと迫りくる八王子くんを前に、日頃察しの悪い私でも流石に察した。手を繋げただけで幸せで、あと三か月は今日という日の思い出だけで生きていけるのに、これ以上は心臓に負担が大きすぎる。
「こんな公衆の面前で!?王子様は公衆の面前でこんなことしないよ!?」
「ねぇ、今空気読むとこ」
私は青い紫陽花が揺れるのを横目で見ていた。もうすぐ、夏が来る。
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