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都会のどこかに、真っ黒な洋館が1軒。
真夜中だというのに明かりがついている。
その洋館で1番広く、どこかの王室のように煌びやかな部屋の中央に、女性がひとり、執事がひとり。
女性は下に何を着ているか分かるほど薄い、黒いレースのワンピースを着ていて、その下に黒いブラやガーターベルトなどが透けて見える際どい服装をしているが、豊満な胸も引き締まったくびれをより魅力的にさせた。
頭にはプラチナのティアラ、真っ黒で長い髪は巻かれてボリューミーだ。
顔立ちは淑女にも、少女にも見えるが、どちらにせよ美しく、神秘的だ。
彼女は退屈そうに紅茶を飲み、アプリコットジャムのかかったシフォンケーキを食べている。
執事の方は真っ黒な燕尾服を着こなしている。
すらりと背が高く美形だが、まったく感情がうかがえない無表情で、美しい主に忠誠心があるのかどうかさえ読み取らせない。
「アプリコットシフォンもいいけど、ストロベリーパイが食べたいわ……」
黒く美しい女性────スプラッタクイーンは、物欲しそうな目でシフォンケーキをつつきながら言う。
「そう言われましてもクイーン、あのジャムは特別製でして、色彩屋が来ない限りはどうしようもありません」
執事は無機質に言う。
「そんなの分かってるわよ……。でもストロベリーパイが食べたいし、何よりラストを飾るには、彼の塗料が必要不可欠なの!」
スプラッタクイーンはすねた子供の様に頬を膨らませ、唇を尖らせて言う。
実はこのスプラッタクイーン、映画監督である。
彼女は脚本、撮影、演出、すべてをこなし、時には自ら役を演じる事もある。
彼女のスプラッタ映画はどれもリアリティで、グロテスクの中にもどこか美しさがあり、人気を集めている。
故に“スプラッタクイーン”と呼ばれるようになった。
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