真夜中のお茶会

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「駄々をこねられても困ります」 執事はそう言うが、全く困ったようには見えない。 「うるさいわねぇ、あのシーンにはどうしてもあの色が必要なの!それはあなたにも分かるでしょ?」 スプラッタクイーンは、執事を見上げて睨みながら訴える。 「えぇ、その点に関しては理解致します。ですが稚児(ちご)の様に駄々をこねるのは……」 ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン 執事の言葉を遮ったのは、4回連続で鳴らされたインターフォン。 「あら」 スプラッタクイーンは目を輝かせ、玄関がある方角を見る。 ピンポーン ピンポーン 少しの間を置き、今度は2回鳴らされる。 「ね、お願い」 「かしこまりました」 執事は物差しのように正確な歩き方で、玄関へ向かった。 執事が玄関を開けると、そこには誰もいない。 その代わり、ピンクのリボンでラッピングされた黒いプレゼントボックスがある。 執事は黒いプレゼントボックスを持ち上げると、再び物差し歩調でスプラッタクイーンがいる部屋に戻った。 「やっぱり可愛いわ、このスプラッタボックス」 よほど待ちきれなかったのか、執事が部屋に入るなり、スプラッタクイーンは黒いプレゼントボックスを強奪する形で受け取った。 スプラッタクイーンは黒いプレゼントボックスをテーブルに置くと、愛おしげに撫でてからリボンを解いた。 フタを開けると、中には大小のガラス瓶がふたつ、並んでいる。小さい方でもそれなりに大きい。 中身はどちらも赤黒い。 スプラッタクイーンと送り主の色彩屋は、このプレゼントボックスを“スプラッタボックス”と呼んだ。 スプラッタボックスの中身は、決まって赤黒いものが入っている大小のガラス瓶。 大きなガラス瓶には、本物の血やら肉片が入り混じった血糊。小さなガラス瓶には、本物の血が入り混じったイチゴジャムが入っている。
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