真夜中のお茶会

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スプラッタクイーンは、まず血糊が入ったガラス瓶を手に取り、うっとりと見つめる。 「はぁ……、この色は本当に素敵……。あの色彩屋さんにしか作り出せない代物だわ……」 スプラッタクイーンが血糊に夢中になっている間に、執事は部屋からそっと出た。 「きっと素敵なラストが撮れるわ……。報酬は弾まなきゃね」 スプラッタクイーンは部屋の隅にある、小さな机に置かれたノートパソコンを開くと、執事あてにメールを送った。 『色彩屋さんには明日、300万円ほど振り込んでおいてあげて』 次に映画関係者全員に、一斉送信するメールを作成する。 『明日の真夜中2時、ラストシーンの撮影をします。スタジオに集合』 メールを一斉送信してティーセットがあるテーブルへ戻ると、執事が戻っており、粉砂糖が振りかけられたパイ生地が何枚も置いてある。 「ありがとう、気が利くわね」 スプラッタクイーンは少女の様な笑顔で礼を言うと、色彩屋の特製イチゴジャムをパイ生地にたっぷりとかけた。 「パイ生地がないとヒステリックになられる前に用意したまでです」 執事は無機質にしれっと言う。 「デリカシーって言葉ご存知?」 スプラッタクイーンは特製イチゴジャムとパイ生地を交互に重ねながら、しかめっ面をして言う。 「そのようなゲテモノを好んで食べるクイーンに、デリカシーも何もあったものではないと思いますが」 「ゲテモノとは失礼ね!1口食べてみなさいよ」 スプラッタクイーンは、1枚のパイ生地に零れそうなほど特製イチゴジャムをかけ、執事に差し出した。 「私はまだ、人間でいたいのでお断りします」 「ロボットもどきのくせによく言うわ」 スプラッタクイーンは、差し出したパイを自分の口へ放り込んだ。 甘酸っぱいイチゴと血液が混ざり合い、甘く官能的な味が口いっぱいに広がる。 スプラッタクイーンはご満悦。
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