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「お姉ちゃん?どうしてそんなに走るの?」
「異人と関わっちゃダメ。特にああいう大男は、千代みたいな子供を取って食べるっていう噂よ」
「そうなの?でも父様は異人さんも悪い人ばっかりじゃないって」
「そのいい人と悪い人をどうやって見分けるの?とにかく、関わり合いにならないのが一番よ」
千代は知らないのだ。異人の恐ろしさを。
物心ついた時から当たり前みたいに異人がウロウロしてたわけだから、仕方ないと言えばそれまでだけど。
でも、千代は私が守らなきゃ。
「あっ、ふみちゃんじゃない!お買い物?」
友人の春ちゃんの声がした。しかし、振り返っても声の主はいない。
「こっちこっち!」
「えっ!春ちゃん?」
私がすぐに気付かなかったのは無理もない。
春ちゃんは、西洋風の着物に身を包んでいた。
「どうしたの?その格好」
「いいでしょ?ドレスっていうんだって」
正直、似合っているのかわからなかったけれど、「へえ、素敵ね」と言っておいた。春ちゃんまで、異国かぶれになってしまった悲しさの方が大きい。
ここ横浜に住む人間は他の地域の人より異人を実際に目にする機会が多いから、異人が好きか、嫌いか、はっきり別れる。もっとも、「嫌い」派は年々少数派になっているみたいだけど。
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