10人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫よふみちゃん。本当にびっくりするくらい明るいらしいから、夜でも外を歩けるのよ」
「お姉ちゃん、春ちゃんが大丈夫って!」
私の着物の袖をぐいぐいと引っ張ってねだる千代の手を無理やり握ると、「とにかく、帰るわよ」と踵を返す。
「春ちゃん、その話はまた今度ゆっくり。私たちは急ぐからまたね」
半ば強引に話を終わらせて、千代の手を引いて家路を急いだ。
夜に外を歩く?冗談じゃない。
だいたい、異人の作った明かりなんて、信用できるもんですか。
私がこの世で一番嫌いなものは、異人と、夜の闇。
思い出しても体がブルリと震える。
13歳の時。ある夜、うちの近くで火事があった。
「おふみちゃん、お千代ちゃん!大丈夫?」
近くに住むトキおばさんが様子を見に来てくれた。2人きりで暮らしている私たち姉妹のことをよく気にかけてくれる。ありがたい存在だけど、甘えすぎるわけにもいかない。母様の、お兄さんの奥さんという、血の繋がりのないおばさんだから。母様も叔父様ももうこの世にはいないのだから尚更だ。
「ここまで火が来るかもしれないから、私の家に来なさい。こっちなら、少しは火元から遠いから」
「それでは、千代を連れて先に行ってください!私は大事なものをまとめて追いかけます!」
最初のコメントを投稿しよう!