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「わかったわ!くれぐれも気をつけるのよ。お千代ちゃん、おいで」
トキおばさんは千代を抱きかかえ、東の方へ走っていった。
私は早くおばさん達に追いつこうと、急いで荷物をまとめた。母様の形見の着物、千代が大切にしている人形、それから、父様から送られてきたお金。本当は、まだまだ母様の形見の品を持っていきたいところだけど、持ちきれない。
こちらまで火が来ませんようにと祈りながら、最低限の品々を風呂敷に包んで、よいしょと背負った。
外に出ると、確かに西の方の空が夜だというのに橙色に光っていた。火消しの人たちが、目の前を走り去っていく。
私は、火消しの人たちとは反対におばさんの家へと向けて走り出した。
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