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結局、真っ暗闇に包まれてしまった恐怖と、異人への恐怖と怒りと、その他ぐちゃぐちゃした気持ちがわーっと押し寄せてきて、私はもういい大人にならなきゃいけないのに、そのまま真夜中の往来でわんわん泣き続けた。
その後は、泣き声を聞きつけた近所の人が駆けつけてくれて、おばさんの家まで送ってもらった。私のいた場所が実はもうおばさん家の目と鼻の先だったって知ったのは朝になってからだった。ちなみに、自分の家も無事だった。
呼び覚まされた忌々しい記憶に、私は身震いする。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
千代に声をかけられ、ハッと我に返った。
「怖い顔してるよ」
「そ、そう?なんでもないわよ」
必死に笑顔を見せる。
あの後どこかの家の後妻になったトキおばさんはもう頼れない。
異人と仕事をするために横須賀に行ったきり月に一度しか帰ってこない父様には、お金のことしか頼れない。
だから、私が千代のお母さん代わり。
弱いところなんて見せられない。
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