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破
それは勝手な都市伝説だと思っていた。
青男。
真夏のゲリラ豪雨になると現れるという全身真っ青な男の話だ。
何をするでもなく、空を寂しそうに見上げて去っていくのだというが……。
まさか本当にいたとは……。
そして、まさかここまで青いとは……。
格好はTシャツにハーフパンツ、サンダル、そしてサングラス。
最初は顔だけに注目していたが、たしかに全身青色。露出されている肌は全て真っターコイズブルーだ。
「青男さんですか?」
おそるおそる俺は尋ねる。
「え? バレちゃいました。いやぁ、困ったな。バレないようにサングラスしてきたのになァ」
青男は意外と軽い。
そしてサングラス。それ変装だったのか。
何を隠すつもりだったのだろう、青男。
「インスタ始めてから、ちょっと知名度上がっちゃってるんですよね、僕」
と、青男。
「いやいや、インスタの方はたぶんほとんど知られていないですよ」
つうか、たぶん偽物扱いされてると思います。
もしくは変態扱いでブロックされてるか……。
俺は心でつっ込んだ。
「いや、でもすみません。急に声掛けて、驚きましたよね」
青男が言う。
驚かないはずがないだろうと思いながら、
「まあ、ちょっとだけ」
と、俺は建前で会釈した。
「ほんと青い顔してたもんで、お節介かなとはおもったんですが、心配になっちゃいまして……」
青男はニッコリと笑った。
意外に爽やかな笑顔だ。
根は良いヤツに思える。
ただ、オマエに青いとは言われたくない。
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