まえがき

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まえがき

 二〇一七年秋。  本来の僕の年齢ならば、すでに社会人として働いていなければならないのだが、僕は相変わらず大学生をやっていた。  二〇一八夏の今も、まだ大学生。  読書と小説執筆という二つの趣味にかまけて、学生の本分である学業を(おろそ)かにした結果がこれだ。  浪人一回に留年二回。  今年で二十五歳だというのに、まだ大学生。  推理小説好きの友人たちには、『リアル江神(えがみ)さん』などといわれている。  江神さんというのは、推理作家の有栖川(ありすがわ)有栖(ありす)が書いた学生アリスシリーズに登場する名探偵、江神二郎のことをさす。彼はもうすぐ三十路となるというのに何年も大学四回生を繰り返しているという人物だ。  もし気になったら、読んでみてほしい。  江神さんの場合には、ある深刻な理由から大学に留まっており、また人望があり、明晰(めいせき)な頭脳に恵まれた人物だ。  僕にはそんなものはない。  僕の現状は、たんに自分の享楽(きょうらく)的且つ自堕落(じだらく)な性格、それによるいわば自業自得なわけで。  話は戻って二〇一七年の秋。  僕は年間にだいたい百冊前後の小説を読む。そのほとんどが推理小説だ。     
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