野心家の哀歌──コトチカ

10/13
前へ
/58ページ
次へ
「川田さんでしたっけ?いくつか質問させてください。俺はあなたを信用してないので」 「はい、私で答えられることなら」 さっきよりは自然な笑顔になったけど、これは信用するに値しないな。 立ち話も何だから、近くにあったカフェに入って、落ち着いて話を始める。 「早速ですが、芸能事務所と名刺にはありますが、具体的にどのような活動をされているのでしょうか?」 「お恥ずかしながら、まだ設立したばかりの事務所で、所属タレントもおりませんので、芸能活動はありません」 「芸能活動の一環と謳って、いかがわしい仕事を取ってきたりとかありませんか?以前ニュースにもなってましたしね」 こういうことを仕事としてやらせるなんて、パワハラ・モラハラ・セクハラのトリプルアタックで、心身共にダメージを与える…高校生の俺が見ても腹立たしくなる。 そんなことする奴と同じ人間だと思いたくないくらいは嫌いだ。 「決していかがわしい仕事などありません。私達はまだ実績はありませんが、それでも事務所の方針と理念は曲げません。それは社長も同じです」 決意は固いということか。 その会社の方針によっては有り得るとも聞こえるんだけどね。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加