野心家の哀歌──コトチカ

12/13
前へ
/58ページ
次へ
「スカウトや活動内容はだいぶ分かりました。けど、俺以外にもまだスカウトしないといけないでしょう?俺にこんなに時間をかけていいんですか?」 「もちろんです!納得いくまで何度も真心を込めてご説明致しますよ!私はそれだけが取り柄ですからね♪」 川田さんの明るい声に思わず笑ってしまった。 何かこういうふうにただ面白くて笑うの久しぶりだな。 自分から笑うことを忘れていたのかもしれない。 そう思った途端に肩の力が抜けた。 碧伊の言っていた俺の人生は俺が楽しまないと損だという言葉が、じわじわと胸を侵食していく。 俺の人生は俺にしか決められない。 時には未知の世界に飛び込むのも必要かもしれない。 「川田さん、俺はあなたの事務所に入ります。ただ、高校を卒業するまでは、学業を優先させてください。高校を卒業したら、すぐに寮に入ってレッスンに取り組みますから」 「ありがとうございます!これから一緒に頑張りましょうね!」 「はい」 「それがコトチカさんがアイドルになった経緯なんですね」 「まぁな。だけど、アオイもアイドルとか…どんだけ同じ道に進むんだよって感じ」 「でも幼馴染みとずっと一緒なんて、俺だったら心強いと思うんですけど…」
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加