表と裏の鏡合わせ──カヅキ

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体育祭で一番前のセンターで一人でアレンジを加えて…と言っても、大幅に変えたりせずに曲にあった無難なダンスに留めておいた。 ダンス以外の競技もいつも以上にはっちゃけたおかげなのか、オレ達のクラスが優勝だった。 優勝は純粋に嬉しかったけど、さすがに髪が校則違反だったことで、先生から怒られて反省文を原稿用紙五枚も書かされた。 反省文以上に嫌だったのが、何人かの女の子に告白されて急激に冷めた。 嬉しいどころか心底がっかりしたっけ。 告白してきた女の子の中には、オレが片想いしていた子もいたんだけど、その子も他の子と一緒に地味な姿のオレを馬鹿にしているのは知っていたから、結局彼女もオレの外見だけで態度を変えるんだと分かって、手ひどく振ってやった。 もう恋愛はしなくていいや。 オレの恋人はずっとダンスだ。 ダンスの方が色んな顔を見せてくれるし、いつもオレをワクワクさせるから、人間の恋人より絶対いい。 どこか吹っ切れたのか、オレはダンスに一層打ち込むようになって、我流で魅せるダンスを思い付いては、ダンススクールで披露した。 ダンスを踊れば嫌なことは忘れられたし、オレの本来の姿でいられたから。
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