表と裏の鏡合わせ──カヅキ

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高校生になっても帰宅部で、ダンスはダンススクールで好きなだけ踊れるから、学校のダンス部には入る気がしなかった。 もちろんダンスが好きなのが前提だけど、ダンスは楽しむだけじゃないって、あの時の先輩の言葉が、じわじわと分かってきたような気がする時に、学校のダンス部の仲良し連帯感が、オレの気分を削いでしまって、帰宅部にしていた。 今日はダンススクールが休みだったので、久しぶりに先輩に会おうかと思いながら、家に帰る前に先輩の家に寄ろうと道を曲がろうとした途端に、誰かに強く肩を掴まれる。 「あ、あの、突然ですみません!あなたアイドルになりませんか!?」 「は?……警察呼びますね」 「ちょ、ちょっと待ってください!私、こういう者です。決して不審者ではありませんので…」 その人は鞄からそそくさと名刺を出すと、両手で丁寧に渡してきた。 思わず両手で受け取ったけど、本当に不審者じゃないんだろうな? 名刺を見ると、『ライゼプロダクションマネージャー 川田 善晴』と書かれていた。 じっくり見てみると、どうやら芸能人にスカウトしている人らしい。 「いや、オレは別にアイドルにはなりたくないんで…」
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