表と裏の鏡合わせ──カヅキ

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「驚きました?このカフェは芸能事務所に入っている芸能人がデビュー前やデビュー直後の仕事があまりもらえない時期に働くカフェです。アルバイトで社会勉強もできますし、何よりお金がもらえると思えば、みんな働きますよ。ウチの社長もカフェの出資者の一人で、芸能人として食べていけるまでの繋ぎとして、ここで働けばいいと仰って…」 「社長って金持ちなんだ…」 「確かにそうですね。カフェ設立の資金にポケットマネーを使ったと笑っていましたから、そこそこ貯め込んでいたんでしょうね。映画俳優としても有名な方ですし…」 「社長って誰?そんなに有名人なの?」 「渚 天馬(ナギサ テンマ)って聞いたことありません?十年前では頻繁に映画に出ていたんですよ。主役をよく務めていましたね」 十年前って、まだ映画はアニメ映画しか見てなかった頃だな。 母ちゃんとか婆ちゃんなら知ってるかもしれないけど、オレは全然知らない人だ。 「それでは、これからよろしくお願いします。入寮も大丈夫とのことでしたので、落ち着いてからでいいので、書類の提出をお願いします。まだ学生さんですからね」 「分かった。これからよろしく」 結局、押し切られて了承してしまった。
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