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僕達の後方は……僕達の村がある!
誰からともなく、全員が一斉に村に向かって走る!
嫌な予感は村の方から流れてくる煙の匂いで確信に変わっていく。
村が見えた瞬間、全てが赤く燃えていた。
炎は全てを舐めるように燃やしながら、地面を仰々しく照らしていた。
「《母さん!!》」
家の前でうつ伏せに倒れていた母さんを見つけて走って行くと、僕の家は炎の海になっていた。
熱気と隙間から噴き出す炎で家の中には入れなかったけど、母さんを抱き起こす。
「《母さん、大丈夫!?トルクとマリンは!?》」
「《アサド…。二人は…家の中で…もう…》」
母さんの言わんとしていることは分かった。
二人は生きていない。
もしくは殺された後に、家に火を付けたのかもしれないけど、何でこんなことを…!
「《アサド…あなたに…偉大な…神の加護を………》」
「《母さん…?母さん、目を開けてくれ!母さん!!》」
何度呼びかけても揺すっても、何も反応がなくて、手が冷たくなっていく。
この場では有り得ない冷たさだった。
母さんの亡骸はそのままに、弟のトルクと妹のマリンの亡骸を出さなきゃと家に近付いた時に、腕を強い力で引っ張られる。
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