初めての音──レイヤ

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自分の周りは音に溢れていた。 全部全部、何でも音としてしか認識できなかった。 みんなそうだと思っていたから、食事もよく分からなかった。 音を食べるのかと疑問に思っていた。 「初めまして、零也(レイヤ)くん。僕は弓槻 万琴(ユヅキ マコト)です。MAKOTOの方が分かるかな?」 「MAKOTO…?あ、テレビで見たことあるかも…」 この人、ずっと籠った音がしている。 何か言えない秘密があるのかもしれない。 「僕は零也くんの後見人になったから、時々くることになるけど、大丈夫かな?」 「…うん」 「よかった♪後見人と言っても堅苦しく考えないでね♪友達と思ってくれていいよ♪」 MAKOTOは俺を見てくれる? 父さんのお金で後見人になったんじゃないよね? 俺を嫌がって、まだお互い元気なのに、もう後見人がいるなんて、何かおかしい気がする。 MAKOTOの音がハッキリ聴こえたら、もっと仲良くなれそうなのに…。 聴きたいと思っても、すぐにすり抜けて籠ってしまうMAKOTOの音。 俺に心を閉ざしているからか、全く音のない父さん。 何の揺らぎも聴こえない。 俺はもっと強くてハッキリした音が聴きたい。
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