初めての音──レイヤ

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MAKOTOは俺を心配して、定期的に食事を作ってくれた。 味は美味しかったと思う。 ただ、この時は、義務として食べていただけで、やっぱり音として感じている方が楽しかった。 学校でも給食をあまり食べないことで、父さんに学校から連絡がきたらしい。 まだ小学生だったから、家で虐待があるのでは?と思われたらしい。 父さんがいくら怒鳴っても、何も音が聴こえないし、何も見えないし、全然何も感じない。 そもそも親であることも忘れていた。 いつも側にいた大人はMAKOTOだったから。 結局、MAKOTOが学校に出向き、事情を上手く説明して、俺は少食だからそんなに食べられないということで、学校側も納得してくれた。 MAKOTO以外の全員から安堵した音が聴こえた。 本当の事情を知っているMAKOTOは柔らかく微笑んで周囲を見ていたけど、俺以外は拒絶する音が聴こえてきて、その笑顔は無言の圧力だと分かる。 MAKOTOと一緒に帰る途中、MAKOTOが弾んだ声で俺に提案してきた。 「ねぇ、レイくん、これから楽しい場所に行ってみようか?」 「楽しい場所?遊園地?」 遊園地はみんなが楽しい場所だって聞いたから、そう言ってみた。 一度も行ったことがないから分からなかったけど。
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