初めての音──レイヤ

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「遊園地じゃないなぁ。遊園地は今度一緒に行こうね♪今日はスタジアムだよ♪」 「スタジアム?サッカー見るの?」 サッカーなら家のテレビで見れると思う。 MAKOTOはスポーツ観戦が好きなのかな? 「スポーツ観戦じゃないよ。たぶんレイくんが一番見たいと思っているものが見れる場所だよ♪」 スタジアムでMAKOTOはチケットを二枚出して、返された半券で、指定された場所に向かう。 学校帰りで大丈夫なのかと心配したけど、保護者のMAKOTOが一緒だから大丈夫だろう。 そしてスタジアムが光と音の洪水で、全ての音が歓喜と興奮に満ちていて、鼓膜をつんざくんじゃないかというほどの音量と熱量。 音に飲み込まれることは怖くないはずなのに、今はそれが怖い…音だけじゃなくて、場の空気にも飲まれているから? ふわりとした気持ちで、中央のステージが映し出されたモニターを見て気付いた。 あの時、気になった彼が元気に歌って踊っていた。 その笑顔も本当に楽しいからだと分かる笑顔で、遠いけど、つらいという音はちっとも聴こえないし、彼もたくさんの声援に手を振って応えてるのを見て、俺はこっそり小さく小さく手を振った。
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