初めての音──レイヤ

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進学も就職も父さんの…親父の敷いたレールはいらない。 親父自体がいらない。 俺を飼い慣らせる人間は、後にも先にもMAKOTOだけだ。 全て自分で決めることは難しかったけど、一つに躓いただけで諦めることはしたくなかった。 それに負けたら、俺は親父に頭を下げることに繋がりそうで、歯を食いしばってこらえる。 絶対に親父に頭は下げない…! ネットカフェにしばらく泊まって、昼は長く続けられるバイトを探していた時、見知らぬ人に声をかけられる。 話の内容はあんまり興味なかったけど、この人の音はハッキリしていて、やる気満々の元気な音が聴こえてきて、何だか俺も元気になれそうな気がした。 「それでは入所と入寮でよろしいでしょうか?」 「うん、よろしくお願いします…」 「こちらこそ!一緒に頑張りましょうね!」 握手されて手をブンブン上下させる。 痛いからやめてほしい。 この人…川田さんだっけ…暑苦しい人だな。 嫌いじゃないけど…。 事務所の紹介してくれるカフェでバイトを始めることもできて、少しだけ生活が安定してから、レッスンをしながらも、MAKOTOのことが気になっていた。
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