初めての音──レイヤ

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今は万琴に会うこともできるようになった。 ただ万琴の方がアイドルの先輩として、少しだけ突き放すようになってきた。 俺が万琴を頼るとリョージが心配するんだと万琴から忠告されて、リョージが万琴に会って俺のことを話していることを知った。 俺がリョージにベッタリ甘えるのを、リョージは嫌がらないし、何だかんだで構ってくれるから、それに甘えることに少しだけ躊躇いはある。 けど、それを万琴に求めることは違うのも分かっている。 だってもう、万琴の音はハッキリとした楽しくて嬉しい音が聴こえる。 きっと幸せなんだろう。 もし、俺に音があるとしたら、どんな音が聴こえるんだろう? 聴こえなくても、COLOR'Sとして一緒にいるみんなとの時間は、音に潜るよりも心地よくて、胸があったかくなる。 音じゃなくても、この気持ちはずっと消えない、大事なこと…それは間違ってないと思うんだ。
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