声を忘れた天使──リョージ

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ないと思いたかっただけで、本当は自分に何か変化が起こっているのは分かっていた。 僕以外はみんな女の子で、僕みたいに声が出にくいことはないみたいだ。 僕だけどんどん変わっていく。 身長もみんなより高い。 よく見ると、喉仏が出ている。 明らかにみんなと違う…僕も女の子だったらよかったな。 暗い気持ちで家に帰ると、音がしないように玄関のドアを開けて、中に入ったら音がしないように鍵をかける。 僕がジュニアアイドルをやっていることは、義理のお姉さん(お母さんの連れ子なんだって)だけしか知らない。 お父さんに知られたら、僕は学校に行けるかどうかも分からなくなるほど、自室に監禁されるだろう。 僕とお姉さんは二人だけの秘密にする為、敢えて仲が悪いフリをして、秘密を洩らさないようにした。 本当は仲良しなんだけど、二人だけで話す時はいつも楽しかった。 僕にトランプやウノを教えてくれたのもお姉さんだったし、チェスは二人で勉強して、こっそり対戦したりもした。 僕にジュニアアイドルになることを勧めて、児童劇団のオーディションも受けさせてくれた。 レッスン料は二人で貯めていたお小遣いで何とか賄い、ジュニアアイドルとしてデビューしてからは、何とかなるようになったけど、二人でアリバイ工作をしないといけなくなった。
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