声を忘れた天使──リョージ

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隠すことが難しい時は、お母さんも巻き込んでアリバイ工作の一人になってもらった。 お母さんは僕とお姉さんが本当は仲良しなのを知って、とても喜んで協力してくれた。 母方の祖父母まで協力してくれたのは驚いたけど。 それでも今まで通り、仲が悪いフリを続けて、お父さんの目を家族で欺き続けた。 騙すなら最後まで騙しきる…僕とお姉さんのスローガンで、二人とも本気で守り続けた。 「轟グループと一部だけ業務提携をすることになって、今度親交を深める意味も込めて食事会を開くことになった。全員予定を空けておくように」 困ったな…アイドルの仕事が入ってたら、食事会に出席なんてできない。 でも、そんなこと言えないし…。 僕が困った表情で俯くと、お姉さんが助け船を出してくれた。 助け船と言えるか微妙な感じはあったけど。 「お父さん、食事会は陵治(リョウジ)はこなくてもいいんじゃない?高校受験でかなり難関の名門校を受けるんだから、食事よりも勉強を優先させた方がいいと思うのだけど」 「む…それはそうだが、陵治はそんなに成績が悪いのか?」 「あの、自分で模擬試験をやってみたら、ちょっとだけ不安要素が見つかったので、そこを解消する意味もあって、勉強のやり方の見直しをしているんです!」
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