声を忘れた天使──リョージ

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勉強するフリをしながら、手帳でスケジュールを確認してみると、やっぱり食事会の日は仕事が入っていた。 ただ、声が出にくい今の僕に仕事がこなせるんだろうか? ほとんど歌が歌えない僕は、ダンス専門からも外された。 次の契約更新で、僕は解雇されるのだと言われた。 声が出にくいのは、やっぱり声変わりで今のグループには合わないかららしい。 僕は事務所の仕事を手伝いながら、舞台やゲームの声優、アニメーション映画の声優、ドラマの端役、何でもオーディションを受けたけど、事務所の後ろ盾がない僕はオーディションに落ち続けて、進学した学校でも成績は最下位にまで落ちていて、特に何もやりたいという気持ちが消えかけていた。 何とか学校を卒業して、一人になりたくて家を出て、身の振り方を考えていると、見知らぬ男性に声をかけられた。 「あの、アイドルに興味ありませんか?」 「アイドルって、歌って踊るあのアイドルですよね?」 「ええ、興味ありますか?」 「僕はジュニアアイドルをやっていたので、興味があるというか…」 「もしかして現役の方ですか?」 「いえ…もうだいぶ前に解雇されましたから…」
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