声を忘れた天使──リョージ

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悲しくて悔しいことのはすなのに、僕はただただ困ったような顔で笑っていたに違いない。 視界が滲んで見えなくなる前に、彼のスーツの袖を掴んでいた。 「僕にもまた歌って踊るアイドルになれますか?僕はまた歌ってもいいんですか?」 「たくさん歌って踊ってください。全力投球でステージで輝いてください!私達も微力ながらお手伝いさせていただきます!たくさんの人を笑顔にしましょう!」 「はい…!もう一度、アイドルとして頑張ります…!」 涙が止まらなくて、僕をスカウトしてくれた川田さんが、ハンカチを貸してくれて、その優しさに更に泣けて、僕はあの日だけで何年分かの涙を流したんじゃないかと思うくらい泣いた。 カフェでコーヒーまで奢ってもらって、その時に改めてジュニアアイドルの時の活動を話して、川田さんとこれからのことを話して、とても話が弾んで、僕はやっぱりアイドルでいたいんだと思った。 その日に事務所に連れて行ってもらって、凄くびっくりしてしまった。 だって社長って……あの渚 天馬だったから! 少し年は進んだけど、あのオーラは変わっていなくて、僕は全く動けなかった。 今でもかっこいいなんて凄い…!
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