声を忘れた天使──リョージ

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一度キチンとするべきだと思って、家に帰ってお父さんに包み隠さず全て話した。 怒られても殴られても、僕はアイドル以外の道はないんだ…! 「……どこかで分かっていた。お前が子供らしからぬことをしているのはな。何度も夜中に帰ってきたり、真由子(マユコ)と仲が悪いフリも分かっていた。ただ、母さんに今まで心配をかけたことは謝りなさい。それくらいできないなら、アイドルなんて認めることはできない」 お父さんは全部知っていて、僕のことを見逃してくれていたんだ…。 その気持ちに胸が熱くなったけど、先にお母さんに迷惑をかけたことをしっかり謝った。 「いいのよ、陵治がいっぱい頑張ったことは知っているから。でも、悩んでいたなら、誰かに相談してほしかったわ…家族なんだから」 「そうよ、私はお父さんも陵治も本当の家族でお母さんと同じくらい大切に想っているんだからね」 「みんな…ありがとう…ございました。僕はまたアイドルとして頑張ります…!だから見ててください、僕がステージで咲かせる笑顔を…!」 涙は胸に閉まって笑顔でそう言った。 会うことはそんなにないかもしれないけど、悲しい別れじゃない。
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