野心家の哀歌──コトチカ

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それから年度が変わって、結局俺は高校に進学した。 あの日、碧伊がウチの両親に直談判と言って、俺を進学させるように頼み込んだのだ。 両親は驚いていたが、俺の進学については、両親なりに考えてはいたが、俺が家で跡継ぎの勉強をすると強く希望していたから、言わない方がいいのではと思っていたそうだ。 俺は両親は跡を継ぐことを望んでるから、高校に行かずに家で勉強することを喜んでくれると思っていた。 どこかでそう思い込んでいたのかもしれない。 碧伊が切り出すまで、俺達家族は一般家庭では話題になることに踏み込むことがなかったのだと知って、少しだけでも自分の気持ちを伝えないといけないんだと強く感じた。 「また仏頂面してる。琴周は顔はいいんだから愛想笑いくらいしたら?友達作ったらいいのに」 「顔はって…。性格は悪いってことか?」 「性格は最悪じゃない。少しはアタ…オレを見習ったら?」 「お前のどこを見習うんだよ?」 「失礼な奴!人が心配してるのに!」 小さい頃から一緒だった碧伊と高校まで一緒になってしまった。 それでも少し変化があった。 碧伊が少しぎこちないが、男言葉を使い始めて、一人称も変えている。
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