野心家の哀歌──コトチカ

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理由は自分のポリシーを通して、俺に迷惑をかけたから、それを事前に回避する為らしい。 別にそれくらいは俺も回避できるから、好きにやっていいんだよ…俺に遠慮すんなバカ…。 「お前、部活何にしたんだ?」 「軽音部♪女の子のグループのボーカルになったんだ♪楽しいよ♪」 「……いや、お前…壊滅的な音痴だったよな?確か俺がお前の家で、キーボードで音を教えた記憶があるんだが」 「失礼な!今はかなり上手なんだからな!琴周に教えてもらってから、ずっと自分で練習して、今は人に披露しても恥ずかしくないレベルだし!」 軽音部の女子グループ…あぁ、まだ諦めてなかったのか。 こいつ本気で女の子より可愛いアイドルになりたいんだな。 俺は……俺は跡を継いで家を……。 本当に?本当にそれは俺の夢か? 今まで疑問に思うこともなかったのに、不意に自分の夢と思っていたことが不安になった。 碧伊は自分の夢をこんなに楽しそうに真剣に話しているのに、俺は碧伊以外に話したことはない。 話さなくても周りは分かってるんだと思っていた。 期待も当然で、それに応えられると勝手に思い込んで、周りを碧伊すらも見下していたんだと痛感する。
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